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 Top >> インフォメーション>>特集企画 >> 2.ペインクリニック/宮崎東洋先生  
◎医療と健康の“いま”を知る
No.2/2008.5
日本の第一人者に聞く・最新医療エッセンス
宮崎東洋先生は、メディコンパスクラブ理事。ペインクリニックの世界的権威というだけでなく、スーパー・ドクターが顔を揃える東京クリニックの院長先生でもあります。それだけに、お話を伺うのにも緊張してしまいましたが、たくさんの患者さんたちの苦しみに真剣に向き合ってきたからか、人を元気にするような陽気さと気さくさが感じられました。
メディコンパスクラブ会員の方へメッセージをお願いすると、「痛え、と思ったら、すぐ来てくださいよ」。江戸っ子顔負けの歯切れのいい口調がとても印象的な、優しいドクターでした。

 

痛みを専門に扱うペインクリニックとは?

 痛みにはいくつかの種類があります。疾患が原因の痛みは体のサインとして必要な痛みですが、治療が困難な有害な痛みや、いくら検査をしても原因の分からない痛みもあります。後者の長く続く慢性的な痛みは、心身を衰弱させ、日々の生活の質を低下させてしまいます。ペインクリニックは、こうした痛みを、投薬や神経ブロックなどの方法で解消する診療科です。慢性の頭痛、腰痛、首や肩、胸などの痛み、手術後やけがをしたあとの痛みの解消のほか、がんの末期の疼痛緩和なども行います。
「普通の医療とは少し違うお話になるかもしれません。痛みということに着目し、神経痛からがんの痛みまで、何でも対応します。たいていは何とかなるだろうと思っています。東京クリニックは医療の羅針盤という性格上、セカンドオピニオンというかたちのご相談が多くなるんですが、ペインクリニックだけは診断もするし治療もするという完結型です」
 宮崎東洋先生はスーパー・ドクターとして、テレビ番組でも紹介されている名医です。腰の痛みから杖なしでは歩けなかった患者さんが、杖を持たずに嬉しそうに帰っていく。テレビ放映の一場面ですが、そんな奇跡のような光景が、東京クリニックでは日常的に繰り返されているのです。
「例えば、骨粗しょう症の患者さんの背骨が変形して椎間板が潰れ、腰の神経が圧迫される。痛いですよ。足の痛みを一時的に遮断する神経根ブロックの注射をしてあげる。瞬間的には激痛が走るけれども、その痛みに見合うだけの効果がある。慢性的なしびれや痛みがなくなります。治療から3時間で痛みがなくなって、杖なしで歩けるようになる。そんなふうに、痛みに顔を歪めていた人が治療をして、一週間くらい経って再診でやってきたときに、和らいだ表情で入ってきてくれたら、最高ですね」
 神経ブロックと呼ばれる治療で行われる注射は1分足らずで終わります。これは、痛みの伝達を遮断する方法で、5分ほどすると痛みはなくなっていきます。注射は何度か繰り返すのが普通だそうですが、概ね3回ほどで完治する方が多いとのことです。
 レントゲンや最新鋭のMRI、CTといった画像診断装置が東京クリニックには導入され、診断や治療後の経過観察に活躍していますが、宮崎先生の場合、そうした機器がなくても、体内の様子が見えているかのように、的確に神経を探り当ててしまいます。それだけ徹底した解剖学の知識がベースにあるわけですが、昔から、宮崎先生が使う針先には目がついている、と周囲の医師たちは驚かされてきたそうです。「解剖学的にはほとんどの神経に針の先を当てられる」と先生はおっしゃいます。

 

痛みに苦しむ現実の姿に触れ
痛みをとり去る治療の道へ


 宮崎先生がペインクリニックの道を歩き始めるのには理由がありました。学生の頃は外科医を志望していたそうですが、インターン時代、日本でも専門的に痛みを治療する医療分野がなければならない、という空気が高まっていて、それを担おうとする麻酔科の動きに触れたのです。日本のペインクリニックの始まりの時期でした。
「ちょうどその頃、伯父が肺がんになって、見舞いにいった。そのときの顔が忘れられなくてね。白いワイシャツを着ていた私を見て、白衣に見えたのでしょう。医者だと勘違いして、薬を下さいと言う。悲惨でした。その強烈な体験があって、私もペインクリニックの道に進むことを決めたのです」
 ペインクリニックの創成期には、がんの疼痛緩和が大きな仕事でした。
「私はがんの患者さんばかり診ていたくらいです。あと半年と宣告される人たち。当時はがん医療も未熟で、医者が匙を投げざるを得ない状況が多かった。医者としては無責任じゃないか、と思えたわけです。せめて痛みだけでもなくしてあげたい。QOL(クオリティー・オブ・ライフ/生活の質)改善は絶対的な仕事ですよ。私の弟子の中には、がん性疼痛を専門にする医師も何人も育っています。東京クリニックにはベッドがないので、今はがん医療に直接関わることは少ないのですが、セカンドオピニオンという形では関与しています。
 がんの治療に関しては、以前とは状況が変わっていて、末期の患者さんばかりが対象ではありません。放射線治療をすればいろんな痛みも出るし、化学療法をやれば神経がやられてビリビリ痺れたりする。それを一緒に診ていきましょうというのが、考え方です。あらゆる医療の場面で痛みの治療は重なって出てくることはよくあることです。ペインクリニックは、痛みのある患者さんに注射をして痛みをとるだけ、と思われがちですが、そうではなくて、ある意味では全身のあらゆる治療に精通していなければならないわけです」
 痛みの有無は、患者さん本人にとっては天国と地獄ほどの違いがあります。つらい痛みは心にも影響を与えかねません。原因も分からず、体から消えない痛みに悩み、生きていることに絶望したり、何かに罰せられているような感覚に陥ることさえあるのです。
「医者としては体の痛みを確実にとる。体の痛みがある程度抑えられると、心や人間関係、社会的な痛みも解決できる方向に向かいやすいわけです。痛みに向き合うということは、QOLを通して患者さんの人生に向き合うことです。だから、大変なことをしている可能性はあるんですよね。どんな医者もそうですけれど」

 

全身のどんな痛みにも対応
気軽に相談できる診療科

 麻酔は一般の麻酔科でも行われますが、通常、時間が経って麻酔薬が切れると痛みは再現されます。けれども、神経ブロックは同じ薬を使っても、同じレベルの痛みには戻らない特徴があります。
「ペインクリニックは麻酔科から始まったけれど、麻酔科とは違う世界を開拓してきた。注射で麻酔を繰り返すと、痛みは消えていく。何回やっても元に戻る人の場合はまた別の方法を使うことで、痛みのない状態が維持できる。けれども、麻酔がかかったままの状態で、痛くはないが、痺れを伴う状態が続くということもある。それは患者さんと相談して天秤にかける。そうすると、たいていの痛みは何とかなる。しかもそれはメインの方法であって、それにプラスして治療薬を駆使するんですよ」
 薬についても、実は専門家なのです。患者さんと真剣に向き合い、痛みを解消する最も良い方法を選び出す。治療は豊かな医学知識と臨床経験によって支えられていました。
「痛みで顔が歪んでいた人が笑ってくれるだけでも一歩前進です。薬は手術をする病院だったらどこでも手に入るような薬剤です。特殊なものではない。副作用はないように技術を磨く。正しく処置していれば問題ない。そのためにペインクリニックの医師は専門的な勉強をしているわけです」
 患者さんの症状は三叉神経痛、片頭痛、骨の変形の痛み、ヘルニアの痛み、帯状疱疹、そしてがん性疼痛などが代表的なものだそうです。整形外科に通い、いろいろな治療を受けても症状が改善されず、たくさんの方が痛みを抱えたまま、毎日を送っています。この痛みが消えたら、どんなに救われるだろう。そんな悩みをお持ちの方は、思いきって宮崎先生に相談してみてはいかがでしょう。
「実は、痛みの患者さんは女性が多いんです。3対2で女性です。女性は我慢強いのか、高齢になってから通ってくる人が多い。ひどくなる前に来てくれたほうが治療はしやすいんだけどね。若い人でも片頭痛は多いですよ。だんだん年齢とともに出にくくなってはくるけど、今はいい薬もあるから、かなり改善できるんだけどね。肩凝りも多い。プラス冷え性。そういうのも治療しますよ。
 ペインクリニックというと、専門性が強くて敷居が高いと思うかもしれませんが、何の痛みでも構わない。胆のう炎で来られてもいいんですよ。僕たちが判断をして、他の科を紹介します。そういうものを見分ける勉強もきちんとやっていますから(笑)」
 茶目っ気たっぷりの笑顔が、とても素敵な院長先生でした。

 

宮崎 東洋(みやざき・とうよう)
本名:みやざき・はるひろ
1941年長崎県生。70年順天堂大学医学部大学院修了。93年より順天堂大学医学部教授。現在、順天堂大学医学部名誉教授。医療法人将道会・東京クリニック院長、専門は麻酔学で、神経ブロックなどによる疼痛治療(ペインクリニック)の第一人者。NHK『今日の健康』出演や著作を通して、ペインクリニックの啓蒙・普及にも努めてきた。

小野喬ら体操選手が活躍し、東京オリンピックが開かれた頃、宮崎東洋先生は体操競技に熱中し、才能を発揮した。高校時代には国体で優勝、それが縁で順天堂大学へ進んだ。大学1年の時には床運動で学生選手権に個人優勝。下の写真は当時の宮崎先生。鉄棒演技の一シーンから。空中高く舞い、着地に向かう瞬間。

 
 
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