vol.17 浅田弘法先生

〉ドクターズインタビュー
メディコンパス/2014年2月取材・2017年12月改稿:
Mnimally Invasive Gynecolygic surgery Center at Shinyurigaoka Gneral Hospital

新百合ヶ丘総合病院 副院長/産婦人科部長 浅田弘法先生に聞く
婦人科疾患への取り組み

婦人科腹腔鏡下手術の現状
女性の生涯にわたる悩みに応え得る診療を目指して
新百合ヶ丘総合病院 副院長/産婦人科 部長/婦人科低侵襲手術センター長
浅田 弘法 先生
Dr. Hironori Asada
Dr_asada


【 専門科目 】
産婦人科

○杏林大学医学部産婦人科客員講師
○埼玉医科大学国際医療センター 婦人腫瘍科客員准教授
○前 慶応義塾大学医学部産婦人科 専任講師
●日本産科婦人科学会認定医
●日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医
●日本生殖医学会生殖医療専門医

【 Profileプロフィール 】
慶応義塾大学医学部卒業
1991年 慶應義塾大学 医学部助手(専修医)
1995年 済生会神奈川県病院産婦人科
2000年 慶應義塾大学病院診療医長(産科)
2005年 慶應義塾大学専任講師(医学部 産婦人科)
2013年 杏林大学医学部産婦人科客員講師
2013年 埼玉医科大学国際医療センター 婦人腫瘍科客員准教授

産婦人科医や分娩施設が減少の一途をたどるなか、産科への地域のニーズに応えることを目的の一つとして、新百合ヶ丘総合病院は誕生しました。
先進的な医療を提供する総合病院に設けられた産婦人科は、高度な不妊治療、妊娠分娩の管理から婦人科疾患に至るまで、総合的に対応できる診療体制を備えています。その理念は〝女性の生涯にわたる悩みに応え得る診療〟。特に婦人科領域の悪性腫瘍に対する腹腔鏡手術は、体に優しい低侵襲手術を可能とし、開院以来多数の実績を残してきました。
「腹腔鏡手術を希望しても、手術まで半年から1年待たされるのは当たり前」と言われる首都圏の状況のなか、豊富な経験を持つ医師が複数名所属する婦人科施設の誕生は、手術を望む患者さんにとって大きな希望となっています。
今後は、安全で安心できる総合病院の産科施設として新しい命の誕生を支えるとともに、ダヴィンチ手術や、サイバーナイフ、陽子線などを使用した新しい婦人科疾患の治療にも積極的に取り組んでいく予定です。
慶応大学医学部専任講師を長く務め、現在は新百合ヶ丘総合病院副院長として産婦人科部長を兼務する浅田弘法先生に、婦人科腹腔鏡手術の現状と幅広い診療の中身についてお話し頂きました。


腹腔鏡手術とは

開腹手術の代わりに、新百合ヶ丘総合病院産婦人科では、腹腔鏡手術を受けることができます。
これは内視鏡手術の一種で、3〜12ミリ程度の小さな孔(あな)をお腹にあけてカメラ(腹腔鏡)を入れ、モニターに映し出された映像を観察しながら行う手術方法のことです。
その優れた特長は、これまでの開腹手術と比べて傷が目立たないことや、痛みが少ないこと、入院日数が短いため社会復帰が早くなることや、術後の癒着が比較的少ないために再手術の多い疾患や、不妊症の手術に向くこと、などがあげられます。
また、拡大して見ることができますから、より繊細な治療が可能であるというのも大きなメリットです。


腹腔鏡下手術の現状と「腹腔鏡センター」

腹腔鏡手術は、婦人科領域ではまだまだ限られた医療施設でしか受けることができず、普及も遅れています。そのため、患者さんが腹腔鏡手術を希望しても半年から1年待ちという状況があり、私たちはそうした問題の改善にも貢献したいと考えています。
開院にあたっては、1000例から3000例という豊富な手術経験を持つ医師が複数名集結し、腹腔鏡手術の信頼できる治療拠点となるべく設備と体制を整えてきました。
新百合ヶ丘総合病院では、「低侵襲婦人科手術センター」を運営し、2017年には年間約1300件の婦人科腹腔鏡手術を行っています。ここでは、腹腔鏡手術、子宮鏡手術、卵管鏡下卵管形成術など、婦人科領域の内視鏡手術を多岐にわたって行うことが可能です。
質の高い婦人科内視鏡手術が迅速に提供できる当センターは、技術レベルの均一化と、高いスキルをもった若手医師の人材育成にも貢献しています。

体への負担がより少ない診療を目指して

現在の医療は治ればいいという時代から、生活の質(QOL)を重視し、よりよい状態に治療する方向に向かっています。そのため、私たちは腹腔鏡手術の技術と経験をいかして、お腹に大きな傷を残さず、体への負担がより少ない診療に努めています。
手術で使われる機器は、最近15年ほどの間に急速に性能と精度が向上し、大変な進歩をとげました。特に、腹腔内を観察するCCDカメラやテレビモニターの進化は、驚くべき高画質化をもたらしています。精細な視野を生かした腹腔鏡によって、治療できる疾患の範囲も大きく広がってきました。
新百合ヶ丘総合病院では、2012年8月の開院当初から腹腔鏡手術を行ってきましたが、腹腔鏡手術を含めた内視鏡手術全体で数えると、2013年2月以降は毎月30件から40件ほどの手術を行うようになり、2017年では、1カ月で100件以上の内視鏡手術が行われるようになってきました。
妊娠を望まれる方には、子宮の筋腫だけを取り出して子宮を温存するような繊細な手術も行いますし、子宮内膜症の病巣の切除手術など、多岐にわたる腹腔鏡手術を行っています。
当院で開腹手術になるのは、かなり大きな子宮筋腫や、子宮肉腫疑いの子宮腫瘍、卵巣がんなどの、比較的限られた疾患で、外科的治療全体の97%程度は腹腔鏡手術で行っています。

腹腔鏡下手術中の様子/複数の医師が複数の鮮明なテレビモニターで観察することが可能なため、より安全確実に手術を行うことができる。


腹腔鏡下手術の対象となる疾患について

腹腔鏡手術の対象となる疾患は、はじめは卵巣のう腫や子宮筋腫などの良性疾患でしたが、現在では悪性疾患にも使用されています。
しかし、悪性疾患については、なかなか公的保険の対象とされませんでした。ようやく、2014年4月から早期子宮体がんの腹腔鏡手術が保険診療になりましたが、当院では、自費あるいは先進医療として、開院以来、腹腔鏡下子宮体がん手術(子宮全摘、骨盤リンパ節郭清、傍大動脈リンパ節郭清)を施行してきました。
早期子宮体がんはすでに海外ではエビデンス(臨床結果などの科学的根拠、証拠)が示されていましたが、国内での導入が遅れていました。子宮体がんや子宮頸がんについても、海外では腹腔鏡手術が行われています。腹腔鏡手術は手術時の出血量を抑え、術後の合併症も少なく、社会復帰も早いことなどが報告され、有効性が指摘されています。
新百合ヶ丘総合病院では、現在、子宮筋腫、子宮腺筋症、卵巣のう腫、子宮内膜症などの良性疾患に加え、子宮体がん、子宮頸がんなどの悪性疾患の腹腔鏡手術が可能になっています。

【新百合ヶ丘総合病院 婦人科 手術件数の内訳】2012年8月〜2013年10月までの統計
 腹腔鏡手術件数は、2013年10月時で月あたり約60件。2017年3月には約120件とほぼ2倍に増加しています。


最新の機器を利用した検査と診断の新たな取り組み


腫瘍の診断は、画像診断と病理診断が基本になります。
 近年、画像診断機器の性能は著しく向上してきました。MRI、CTによる診断とともに、PET—CT(ペット・シーティー)は、腫瘍の転移巣の検出に大きな力を発揮します。新百合ヶ丘総合病院では、 こうした画像診断機器をすべて備えています。精度の高い最新の機器を院内で利用できますから、腫瘍の診断・再発転移巣の検査をより早い段階で、素早く行うことができます。


センチネルナビゲーション手術(SNNS)の導入

リンパ浮腫は、産婦人科などの悪性疾患でリンパ節を切除する場合には、一定頻度で避けられない合併症です。私たちは、このリンパ浮腫に有効な対策がないか、模索してきました。
乳がんや悪性黒色腫の領域では一般診療となっているセンチネルリンパ節生検という手法がその対策の一つです。転移の可能性があるリンパ節だけを検査して、正常なリンパ組織は温存するというセンチネルリンパ節生検を取り入れた低侵襲治療です。
婦人科領域では、国内でもいくつかの施設で臨床研究として行われ、すでに、初期の子宮頸がんに対しては、条件が整えばリンパ節郭清を省略するという診療を行っている施設が数施設(函館市民病院、東北大学病院、鹿児島大学、北野病院など)あります。
当院でも2014年10月から、倫理委員会承認のもと、センチネルリンパ節切除の研究を開始しました。
これまでの臨床成績を検討し、2017年からは当院でも、初期子宮頸がんに対して一定の条件を満たしていればリンパ節生検にとどめ、リンパ節郭清を省略することを開始しました。子宮体がんに対しては、まだ問題点もあり、現在のところは継続して検討していく予定です。

1)子宮体がん PET-CT画像/矢印の先の赤い部分が子宮の腫瘍
2)傍大動脈リンパ節転移 PET-CT画像/矢印の先の赤い部分が大動脈周囲の転移リンパ節
3)4)傍大動脈リンパ節転移 PET画像と3DCT画像を複合して、リンパ節転移をわかりやすくしたもの(赤:動脈、黄色:転移リンパ節)


生活の質(QOL)を考慮した婦人科領域のがん治療

当院は、腹腔鏡による低侵襲治療として、子宮頸がん、子宮体がんに対応しています。また、センチネル生検の導入によるリンパ浮腫予防にも取り組んでおり、臨床的に先進的な施設となっています。
今後は、陽子線治療や、手術支援ロボット「ダヴィンチ」、〝切らずに治す〟サイバーナイフをいかした新しい治療も積極的に行っていく予定です。
がんなどの治療においては、患者さんの生活の質(QOL)を考慮することがとても大事です。手術後も、それまでと同じように毎日を過ごせるよう、体への負担をできるだけ軽減し、患者さんにとってメリットのある最適な治療を行っていきたいと考えています。

お産と不妊治療

新百合ヶ丘総合病院は、地域で安心してお産ができる病院であることを理念のひとつとして誕生しました。
すでにたくさんの赤ちゃんが元気な産声を上げています。
産科医療の特長としては、当院が高度な医療を提供できる総合病院であることから、単なる産科施設ではなく、小児科医が常勤し、緊急手術にも対応できるということが挙げられます。
また、不妊治療を行うリプロダクションセンターを設置しているのも大きな特長です。
2015年5月現在、採卵数は年間200件程度ですが、今後はより増加するものと考えています。
リラックスして治療に専念できるよう、プライバシーを重視し、患者さんの気持ちをすこしでも和らげられるよう環境にも配慮しています。
体外受精の根幹を支える胚培養では、しっかりとした技術を持つ培養師が受精卵や配偶子(卵子、精子)の取り扱いに携わっています。
受精卵の培養、凍結などを行うユニットのクオリティも高く、これまでの体外受精の年齢別妊娠率は、高度な不妊治療専門のクリニックと同等の成績を得ています。

不妊治療における総合病院としてのメリット

当院不妊部門の特長は、病院としての高度な機能を持つことです。
一般に、不妊診療はクリニックで行うことが多くなっていますが、子宮、卵巣、卵管などに病気がある場合、治療よりも体外受精が優先されることがあります。それは診療としては間違いではないのですが、外科的治療から体外受精まで一貫した診療ができる当院では、いろいろな選択肢から、より適切な治療を選択することが可能です。
実際に、不妊治療を受ける患者さんの年齢層が高くなっていることもあり、検査で卵巣腫瘍、子宮筋腫、子宮内膜症などの併発が見つかったり、偶発的に子宮頸がんや子宮体がんが見つかることも増えています。
しかし、こうした場合にも、当院では体への負担が比較的少ない腹腔鏡・子宮鏡・卵管鏡といった内視鏡手術を高いレベルで行い、治療することができるわけです。
このように、当院では高機能な総合病院のメリットをいかし、安全面を考慮しながら、女性の生涯にわたる悩みに応えうる診療を提供していきます。

写真左:手術室同様清潔に管理され、各種安全対策が施された胚培養室のクリーンベンチ・配偶子・胚操作用顕微鏡
写真中:同 冷凍用窒素ガスユニット
写真右:新百合ヶ丘総合病院 産科・産婦人科 分娩室



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